2011/06/12

異縁連想

仕事のスケジュールの一環として毎月秋田、新潟、鯖江に出かける。5月30日から6月1日にかけて、鯖江に出張した。居酒屋の部類に属するが、蛇足ながら夜の会食というか飲み会で食するポテトフライは美味しい。出張先の社長が「この店のポテトフライは北海道産品のポテトを使用しており絶品ですよ」という。勿論、魚も美味い。そういえば、カラッと揚げてありサックとしていてポテトフライとしては切れ味が鋭い。小生も「美味しい」という。二人の会話に遠慮してか仲間の社員は遠慮がちにポテトフライを食べる。客をもてなすという精神を持っているのだと内心感心する。話を戻し本題に入る。出張三日目に現在も間接的に繋がりがある会社をクレハの社員Mさんと訪問の後、クレハ在職時に一緒に仕事をしたN氏のご自宅を訪問する。N氏は官僚OBでクレハ時代にプロジェクトとして一緒に仕事をしたというより指導を仰いだ方である。彼はプロジェクトリーダーとして、大蔵と交渉し予算を獲得し、プロジェクトを担当する企業に配分し企業の技術開発力の向上を図る本来の官僚らしい仕事する、昨今ではめずらしいタイプの技官である。退官後も年に1回は訪問し、よもやま話しを始めとして当時のプロジェクト、最近の技術開発の話で盛り上がる。この度は16時に自宅にMさんと訪問する。関心事である福島原発の話から始まり、話しの焦点が官・民の技術開発に対する取り組み姿勢に関する話題に絞られて行く。今回は、技術開発のあり方としてメモを取り出し「異縁連想」という熟語をメモ書きし、話をされた。その内容は、「新しい仕事や難解な仕事をするには創造性を発揮し物事の原理原則を発見し問題解決を図りながら行うが、その場合これまで経験しない困難な問題に出くわした時にどのような発想或いは創造を働かせるかが大切である。プロジェクトを成し遂げるには、そのプロジェクトを担当する要員の感性とプロジェクトを成し遂げようとする使命感が不可欠である。」ということであり、「仕事をする上では、自分なりの哲学が必要であるが、多くの者は専門知識についての学問はあるが学問の基礎となっている哲学に欠ける。」ということである。帰りしなに、Mさんは「サインして下さい。」といいそのメモをもらった。恐らく、後輩の技術者に技術開発者としての在り方を説明するのかと想像する。帰宅後、「異縁連想」を広辞苑により調べたが載っていない。インターネットで検索した。「異縁連想」は、イギリスの作家アーサー・ストラーの言葉であり、「クリエイティブな独創性とは、何もないところからアイデアを創造することではなく、しっかりと確立された考え方を組み合わせ、相互に深め合うというプロセスからアイデアを生むことで、このプロセスを「異縁連想」という」とある。又、「創造的な行為とは、すでに存在する事実、考え、技能、技術を新たに発見し、選び、並べ直し、組み合わせ、統合することである。」ということで、要するに、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」ということである。常に、自分のビジョンを持ちその実現のために向かっていこうとする強い意思が創造性を引き出すということを感じた。蛇足であるが、N氏は長年の技術開発が評価され叙勲を受けた方である。

(2011年7月 長屋勝彦)