2012/12/31

中小企業診断士と3つのスキル

ロバート・カッツ(Katz・Robert、ハーバート大学教授)のマネージャーに必要な3つのスキル(能力)を紹介し、中小企業診断士として必要なスキルを明確にするとともに、ISU研究会(以下ISUという)のあり方についての考察を行う。

マネージャーに必要な知識として、ロバート・カッツのいう、①テクニカル・スキル、②ヒューマン・スキル、③コンセプチュアル・スキルという3つのスキル(能力)がある。

①テクニカル・スキル(業務遂行能力)は、業務を遂行する上で必要な専門的知識や業務処理能力をいう。

②ヒューマン・スキル(対人関係能力)は人間関係を管理するスキルで相手方との人間関係の形成を構築するためのコミュニケーション能力の他に、相手方(集団も含む)に働きかけていく(相互作用)能力も包含し、具体的なスキルとしては、コミュニケーション、リーダーシップ、ファシリテーション、コーチング、プレゼンテーション、交渉力などがある。

③コンセプチュアル・スキル(概念化能力)は周囲で起こっている状況を構造的、概念的に捉え、問題の本質を見極める能力をいい、洞察力、想像力、情報収集・分析力、問題解決力などがある。

カッツは、組織の階層を経営者層、管理者層、担当者層に大別した場合、業務を遂行する上で、②ヒューマン・スキルはいずれの階層でも重要であるが、①テクニカル・スキルは特に担当者層で、③コンセプチュアル・スキルは管理者層から経営者層へ階層が上がるにつれて重要であると説く。但し、業務が高度化した今日では、コンセプチュアル・スキルを発揮する上で必要な業務を遂行するための専門知識は管理者層及び経営者層にも必要とされる。

以上のスキルのうち、中小企業の経営を支援する中小企業診断士としてどのようなスキルが必要かということであるが、理想を言えば企業規模を問わず経営者としての力量を有することが好ましい。一言でいえば、環境対応力ということであり、具体的には戦略策定力、決断力である。勿論、この二つの能力の背後にはリーダーシップ、コミュニケーションを包含したヒューマン・スキルが不可欠である。

次に、ISUが前述のスキル(コンセプチュアル・スキル、ヒューマン・スキル)アップのため何ができるかが問題となる。ISU発足当時は、外部から講師として中小企業経営者、外部研修担当者を招聘し、話を聞いた。又、実地に企業診断も行った。ISU設立以来10年弱が経過する。メンバーの力量も向上した。組織は目的達成のため協働する集団という定義にしたがった場合、ISUを組織というか、ISUのビジョンは何かについて考えISUとしての方向性を示し、対応する必要がある。

 発足当時のビジョン:中小企業経営者が、必要とする知識を、必要とするときに、わかりやすい形で提供することを目的とする。
(2013年1月 長屋 勝彦)