2013/09/16

グランドキャニオンに柵を作らないアメリカと、生レバーを禁止する日本

グランド・キャニオンを訪れた人は気づくはずですが、そこではほんの一部を除いて柵がありません。そんな危険なところに柵がないのであれば、事故が起きないのか疑問を持たれる人が多いでしょう。実際、事故は起きています。年間400万人ほどの観光客が訪れますが、毎年10人から20人くらい滑落死が起きているそうです。

日本人の感覚であれば、そんな危険な状態で柵もつくらずに放置していると、行政への非難轟々となるでしょう。しかし、アメリカではそうはならないようです。アメリカと日本では、行政の範囲と自己責任の範囲について、考え方が違います。グランド・キャニオンのような危険地帯に自らいくのだから、滑落から身を守るのは当然自己責任の範囲であり、民間の問題だと、アメリカでは考えられています。

それに対して、日本ではどうでしょうか。典型的な事例として生レバーを全面禁止したことがあげられます。生レバーは食中毒を回避する調理方法が確立されており、日本では定番料理として長らく支持されてきました。それにも関わらず、一度社会問題として大きく取り上げられただけで、厚生労働省の通達という形で全面禁止となりました。


つまるところ、日本では少しでも危険だとみなされた食べ物でも、それ以外でも法律で禁止し、行政で取り締まることが期待されているというわけです。その結果起こることは、行政コストが高くなり、一般国民にとっては税金の支払いという形で負担が回ってきます。経済が成長している段階では問題が表面化しないでしょう。しかし、人口が減少に向かう日本が今後経済が成長するというのは、奇跡的なイノベーションが起きない限り、ほぼ不可能でしょう。一方では医療費や年金支出が毎年10兆円近く増えていきます。また原発停止により、年間で2兆円以上の追加負担が発生します。このような状況を勘案すると、今後は行政機能の大幅な縮小、つまり小さな政府というのも検討する必要があるでしょう。
(2013年9月 橋本 歌麻呂)