2016/11/15

創業スクールを通して中小企業診断士ができること

昨年から、中小企業庁の地域創業促進支援事業である創業スクールの講師をしています。今年は、ビジネスプランを作成するワークショップにて、収支計画づくりを担当しました。私の地元では、受講者が増加傾向であり、創業を志す方々が増えているのは、喜ばしいことだと思います。
私が担当した地元の創業スクールの状況を述べつつ、私たち中小企業診断士が、創業スクールの質を高めて、より多くの受講者を創業へと導くためにできることを考えていきたいと思います。

 受講者は、現在の職業、創業予定の業種、心構えのレベルまで、様々です。自分のやりたい仕事、思いをしっかり語れる方がやはり多いです。ただ、具体的にどうやって開業して、そして稼ぐのかのイメージが掴めないという方が、創業スクールの門をたたいているようです。

 講師は、私たちのような中小企業診断士が多いですが、税理士、社労士、信用保証協会や日本政策金融公庫の担当者、さらには実際の経営者まで、様々な立場の方が講師を務めています。

 カリキュラムは、テーマがある程度決まっています。創業の心構えから始まり、ビジネスモデル、マーケティング、会計、法務・・・と10超の講義と、その間にワークショップを織り交ぜながら進んでいきます。また、各スクール独自のカリキュラムをいくつか入れることが可能で、私が担当した創業スクールでは、ソーシャルビジネスが組み込まれていました。ソーシャルビジネスの講義では、社会の課題を見つけ出す目とそれを解決するアイデアさえあれば、ビジネスに結び付けることが可能だ、と教えてくれていました。具体的な業種が決まっていない受講者にとってはとても面白いカリキュラムだと思います。

 このような中で、創業スクールの質を高めるために、以下3点が必要だと私は考えています。

【① 講義は「網羅」より「集中」を重視する】
 受講生の声を聞いていると、インプットされる知識が多すぎて消化不良を起こしているようです。網羅的に多くの知識を伝えるようとすると、結局のところ説明も薄くなり、本を読んで学ぶ知識と差がなくなります。ワークを多く取り入れて、本当に大事なところに集中して、一つ二つでもいいので、しっかり理解をしてもらうことが重要です。

【② 収支計画を最後まで作るところまで導く】
 受講生は、志望する業種についてのビジネスプランは描けても、それを収支に落とし込む段階になると、途端に手が止まることがあります。スクールの中で、精度の高い収支計画の作成は難しく、最終日の発表でも収支計画まで説明できる人は少ないが実情です。ただ、売上や経費を予測して、初期投資や資金調達も考えて、そこから借入金返済と生計維持まで考えて必要利益を出して、収支計画を立ててもらう。この一連の流れを自分で電卓を叩いてやっておくと、今後、事業と収支がリンクするようになり、より現実的なビジネスプランが立てられるようになります。

【③ ビジネスプランコンテストへの応募を促す】
 実際に、今の仕事をやめて、創業して、独立する、簡単なことではありません。創業スクール参加直後は盛り上がっていても、その後が続かないことがほとんどです。そこで、全国の市区町村などが主催しているビジネスプランコンテストに参加することを強く勧めます。すぐ創業は考えていなくても、ここで入賞すれば創業スタートの弾みにもなります。入賞できなくても、本気でビジネスプランを練り上げる貴重な体験は、今後に活きてきます。

私たち中小企業診断士が、創業スクールのためにできることを考えてきました。このように受講生の方々を導くために、私たちも、受講生の気持ちに寄り添った支援ができるよう、日々研鑽していかなければならないと改めて思います。

2016年10月 S.M.