2013/09/27

若者の年金離れに思うこと

数年前になるが、就職が比較的売り手市場だった年に、姪が就職に関して能天気で、大学卒業を控え海外への旅行にうつつを抜かすなど、定職に就かずフリーターを決め込んでいたことがあった。

「今後、年金はどうするんだ?」と聞くと、彼女曰く、
「自分たちはどうせもらえなくなるから、保険金なんて払うつもりはない。
仲間の皆もそう言っている。」

身近でこんなショッキングな言葉を聞いたため、お節介ながらも伯父の立場から、老後のリスクについてお説教じみたことを出しゃばった記憶がある。
それから数年が過ぎ、社労士の勉強を始め、改めて無年金のリスクとその怖さを強く感じたわけである。そこで、社会問題の一つにもなっている年金について整理し、私見を述べてみたい。

1.年金加入者のメリット
①65歳以降、死ぬまで受給できる。(トータル25年以上の参加が義務)
②万一障害に遭った場合、(参加年数に拘らず)障害年金(本人分)等
を受給できる。
③年金の受給金額は、平均的には自身の保険金支払総額よりも大きい。
総受給金額の50%に、税金が投入されている。

2.無年金(年金未加入者)のリスク
①「自身の寿命は予測できない」ため、老後の生活資金を貯蓄で賄う場合、
長生きするほど経済的に不安にならざるを得ない。
  ②現役時に万一事故に遭遇した場合、労働できずに収入減となり、
生活に影響する。

3.年金制度の現状(白書から)
①高齢者世帯の生活資金(所得)の内訳では、7割が年金、残りは貯蓄。
②国民年金保険料の納付率は減少が続き、2006年で49%と50%を
下回っており、このままでは将来多数の無年金者の発生が予想される。

4.年金制度についてのおさらい
  ①賦課方式:現役世代の保険料+税金で、引退した高齢者の保険金を賄う。
  ②国民はいずれかの年金に加入(国民年金の場合は手続き要)する義務
がある。受給する年金は、
「基礎年金(満額で年額約79万円)+報酬比例部分」からなる。
   ⅰ)国民年金: 会社員・公務員等以外が対象(第1号被保険者)。
定額で全額自己負担。受給は、基礎年金のみ。
   ⅱ)厚生年金・共済年金: 会社員・公務員が自動的に加入。自動的に
国民年金の第2号被保険者となる。受給は、基礎年金+報酬比例部分。
保険料は給与に依存し、個人と会社が折半で負担、給与天引きされる。
無職の配偶者は、保険料を払わずとも国民年金の第3号被保険者と
なり、基礎年金の受給資格が与えられる。

現在の年金制度においては、会社員・公務員あるいはそれらの配偶者は自動的に年金加入者(被保険者)となるが、それ以外の国民年金対象者においては、自主的な加入手続きを行わない限り年金未加入者となってしまうことになる。貯蓄が少ない場合、年金未加入者は生活保護者になる可能性があり、将来的には社会保障財源への影響が危惧されることになる。

以上、年金制度とは、現代のような成熟した社会(老後も安心して生涯を全うできる)においては、多くの国民にとって必要不可欠な制度であることが改めて理解できる。  しかしながら、現在この年金制度の維持が財政的に綻び始めている。原因は、少子高齢化や年金未加入者増による保険料収入の減少と、年金給付対象者増による支給額増大にある。これらの原因の中で、比較的取り組みやすく最初に行わなければならないと思われるのは、
「年金未加入者を少なくすること」である。  すなわち、
「年金のメリットについて正確に理解することが、年金未加入者を減らすことにつながる」
のではないかと考えるからである。

  私が年金について以上のような関心を持ったのは、個人的に勉強をしたからであるが、そうでない場合(学校教育で、あるいは社会人として機会があったとしても)は、少なくとも私の場合には、今までそこまでの重要性を感じることができなかった。
一般的には、年金に関する法律は毎年のように見直しがあり、その都度、ニュース等を通じてその変更内容の概要を知ることができるが、そのためには、年金の基本的な仕組みについて、過去にベースとなる知識を得ていることが前提となるからである。先の事例でとり上げた私の姪の場合においては、明らかに間違った理解をしており、その結果として、現在は年金未加入状態(年金についての案内を無視し、手続きをしない)であるが、仮に将来、
会社員あるいは公務員と結婚することになれば、自動的に国民年金の第3号被保険者となるわけである。その場合のハードル(本人が老後に年金受給権者となるための)は、年金加入期間がトータル25年以上(60歳までに)
という条件になることが予想され、若年時の未加入期間のロスが致命傷となりかねず、一抹の不安を感じざるを得ないのである。

※30歳未満の場合、手続きをして保険金の支払いを延期できる制度があるが、あくまで年金についての理解を踏まえての自主的な手続きが必要となる。

現在の学校教育は、「義務について教えず、権利についてばかり教えている」などの批判もあるが、義務と権利の代表格と考えられる年金については、
どのような内容(質と量)が教えられているのであろうか?
義務への無関心は権利の放棄であり、権利を得るためには、
「義務に関心を持ち、自主的で前向きな申請手続きが必要となる」
のであるが。

(2013年9月 後藤 泰山)