2013/10/29

中国の本当の“力”

先日、中国の深圳へ行った。中国へは学生時代に1度北京に行ったことがあるが、もう20年も前の話である。あの頃の中国は、未だ社会主義のムードが色濃く、人は多いが、どことなくのんびりとした「昭和30年代~40年代の日本」という雰囲気だった。なので、今回の訪中は実質初めてと言って良いだろう。
社会人になり、経済のことが少しわかるようになってからの中国は目覚ましい経済成長を遂げ、今や世界2位の経済大国となった。
・・・と、テレビや新聞では見聞きしていたものの、実際にはその変化を肌で感じたことはなかった。いろいろな人に経済を語る立場にいる人間が近隣国の生の情報を知らないのも気恥ずかしいところもあり、取引先より「今の中国を一度は見た方がいいよ!」と誘われたので、今回良い機会と思い、思い切って訪問をしてみた。

深圳は香港と陸続きで、羽田から5時間ぐらいで到着する(搭乗手続き等をするとなんだかんだ丸1日かかってしまうが)。
香港からは迎えに来てくれたタクシーに乗って深圳へ向かった。香港はもちろん世界有数の大都市として有名であるが、さすがに深圳は香港に近いといえども中国なので、多少、田舎の匂いが残る工場地帯であろうとイメージしながらタクシーに乗っていた。しかし、間もなく想像とは全く異なる光景が眼前に広がった。香港島から中国へ渡る橋から見える対岸にははるか遠くまで高層ビルが立ち並ぶ大都市が広がっていた。
私はその光景を見て唖然とした。それとともに自分の知識・見聞が如何に小さいものかを身にしみて感じた。私の中で「そうはいうものの、日本の方が…」という思いが中国に対し心の底にはあり、そこに安心感を覚えていた。しかし、眼前に広がる圧倒的なボリュームを見て、もはやそんな自信に全く根拠がないことに気付いた。

深圳に到着した後、街を案内してもらったり、食事に行ったり、工場を見学させてもらった。日本とは細部に色々違いはあるにせよ、もはや街中、インフラについては日本と遜色ないかそれ以上のものだった。そして、それ以上に、今まで感じたことのない“感じ”を体感した。
それは、圧倒的な人間の“パワー”だった。深圳は若者が多いこともあるが、街全体が“熱”を帯びていた。人々は皆“ギラギラ”していた。それは、生きるためでもあり、将来への希望に満ちた活力だった。

私も昭和生まれであるが、このような雰囲気を日本では正直言って体感したことがなかった。今の中国国民に比べると、恐らく私なんか“ゆとり世代”なんだろう。「今日本が対峙しているのはこの人達なのか!」そう考えた時、背筋が寒くなった。この力は小手先だけでは、そして綺麗事だけでは受けきれないだろう。もちろん中国も政治的、社会的にはさまざまな問題を抱えている。しかし、人の内に持つ“力”は計り知れないものがあると感じた。
(2013年10月 渥美 仁孝)