2015/04/01

成長エンジンと触媒

 世間では桜が満開の時期を迎えている。昨日は上野、今日は目黒川と、客先へ向かう道中ではあるが、桜の名所を訪れた。平日にも係らず、大勢の人で賑わっていた。日本人は本当に桜が好きですね。

 さて、桜から連想されるものとして卒業式や入学式があるが、学生生活を終え社会人として新たなスタートを切る時期でもある。今年も新入社員研修の講師として、新社会人の方々のスタートのお手伝いをさせて戴く予定である。昔、教師を志望していた私にとってやりがいのある仕事であり、短い時間ではあるが彼らと触れ合うことにより、新鮮な気持ちを取り戻すことができる。
 新入社員研修とは別に、後継者育成に携わって10年近くになる。私の役割は後継者育成塾の受講生のまとめ役であり、いわゆるチューターのような存在である。教室全体で70名近くになる受講生を8人程度のグループに分け、そのグループを1年間担当する。受講生は、一部の幹部候補生を除いて、後継者としての立場は共通しているが、年齢層は幅広く、業種も様々であり、会社の規模もバラバラである。そして、個々の能力及び意識のレベルもまた様々である。中には、親(社長)の薦めあるいは会社の業務命令で参加した方もおり、モチベーションのレベルも様々である。
 しかし、4月の開講から講義を重ねるごとに取り組み姿勢が変わり、顔つきが変わり、発言内容が変わり、2月の卒業時期を迎えると、皆確実に成長しているのである。もちろん個人ごとのレベルの差は存在するが、4月と比較すると明らかに底上げされている。この原因は、1年間経営学・経営理論について体系的に学習したことも寄与しているが、それよりも大きな影響を与えているのは、同じ立場、同じ想いを持った集団の中で1年という時間を過ごしたことである。仲間との交流を通じた刺激が、エンジンの如く彼らを成長させたのである。これは、僅か1~3日の新入社員研修についても同様である。
人間は本能として成長志向を持っている反面、怠惰な面も併せ持っているが、意識の高い集団の中に放り込まれると、自分と周りを比較し、自分の足りない面に気づき、新たな考えに触れ、刺激を与えられ、勝手に成長していくのである。
ただし、完全に放任していればよいのかというと、そうはいかない。やはり、周りとの化学反応を起こすための触媒が必要である。それが指導者の人間力に基づく適時・適切なアドバイスである。サッカー日本代表が好調である。メンバーの入れ替えや戦術の変更の影響もあると思うが、新監督であるハリルホジッチ氏は、日本代表の勝利に対する意識を変えることに重きを置いているらしい。これも触媒の意味合いが大きいと思う。

今後も研修やセミナーを通じて人材育成に関わっていく所存であるが、単に知識やセオリーを教えるのではなく、化学反応を起こす触媒として、成長エンジンを動かしていきたいと思っている。
(2015年4月 藤森 正一)