2016/11/15

あ・うんの呼吸が通じない

日本はハイコンテクストな文化の国だとされている。コンテクストとは文脈という意味だが、ある集団で共有されている知識や体験、価値観などのことを指す。比較的歴史が浅く、移民も多いアメリカなどのローコンテクストな国では、明確な言葉によってコミュニケーションを取る必要性が高いのに対して、国民の同質性が高い日本では、言葉ではっきり言わなくてもなんとなく通じてしまうことが多い。お互いに空気を読み合い、以心伝心、あ・うんの呼吸でコミュニケーションを図っているということである。

ところが近年、日本でもだんだんとハイコンテクストなコミュニケーションが難しくなってきていると言われる。個人の考え方、ライフスタイルが多様化し、ゆとり世代を引き合いに出すまでもなく世代間の価値観のギャップも拡大している。また、グローバル化が進んで外国人とコミュニケーションを取らなければならない場面も増えている。日本社会の同質性が薄まりつつあるというのである。

「そんなこと、いちいち言わなくてもわかるだろうに・・・」
とか、
「なんで、そういうことしちゃうかなあ・・・」
などということが、あなたの周りでも増えていないだろか。

社会がローコンテクスト化してくると、言語によるコミュニケーションの重要性が高まる。いちいち言わなくては分からないのだから、はっきりと言葉で意思を伝えなくてはならない。従来はどちらかというと聞く側、受信する側の「察する力」が重視されたのに対して、今後は話す側、発信する側の「伝える力」が、より大切になってくる。ビジネスパーソンとしては、ロジカルな思考や話し方、プレゼンテーションのスキルを磨かなくてはならない。

伝える力を向上させることは、勿論とても大切である。しかし、それだけではもったいないという気もする。あ・うんの呼吸が通じるのであれば、それはコミュニケーションのひとつの理想形でもある。組織としては、個々のメンバーの伝える力をベースとした緊密なコミュニケーションを浸透させることによって、ハイコンテクストな文化を維持する努力も怠るべきではない。それが、真に風通しのよい、活性化した強い組織といえるのではないだろうか。

2016年11月 福泉 裕