2010/01/12

ブレークスルー

サラリーマンをしていた頃、話は古いが今から40年以上も前、当時の上司厳密にいえば直属の上司の上司である専務から言われた言葉がある。その専務は京都大学工学部で電気関係を専攻しておられた方である。又、そのお兄さんは経済史学者で大塚史学として知られている著名な方である。

当時私は、総合企画室に勤務し中長期経営計画の作成、製品の設備投資に関する原価計算、不採算事業の合理化を目的とした、今風にいえば事業再生に関する経済計算を担当者として行っていた。当時の総合企画室は、中長期計画及び年度総合予算、設備投資予算、研究開発予算の立案が主たる業務であり、トップの室長に専務、主査として事務系と技術系の二人の課長クラスの管理職、担当として私を含めて3人の事務系の課員で、構成されていた。

前置きが長くなったが、専務に特命事項として依頼された仕事として繊維事業の収支均衡化について話をしていた際、「これからは、研究だけでなく製造や事務の仕事についてもブレークスルーをしていく気持ちを持たなくては駄目だよ。」といわれた。そしてそのための心構えについて話を聞いたが細かいことは覚えていない。要するにゼロベースで考え収支が均衡する案を作れということだと感じた。この言葉は、当時の私にとって「眼から鱗」であった。同時に、電気関係を先行した方で、デジタル思考には優れておられると思っていた方ではあるが、発想面にも強いでた方なのだということを感じ、流石に知的レベルの高い(今でいうDNAを持っている)一族であるという印象を持ったことを覚えている。

あれから、40余年後の現在、民間企業、地方自治体で研修講師として改善・改革、創造性開発について話している。その度に専務の言葉が懐かしく思い出される。また、創造性開発いわゆるアイデア出しについて「集中して、血の小便が出るまで徹底的に考えろ。」と部長時代に経営計画室の役員の方から言われたことがある。最近「集中して考えるが血の小便はしたことがない。しかし、夢で考えるようになった。」という話をサラリーマン時代の研究者にした。それに対し、「研究者はそれ位しないと一人前でないよ。」とさらりと言われた。奈良女子大学名誉教授であった有名な数学者の岡潔博士は考える場として3上(馬上、枕上、厠上)と言うことをいわれている。その意味で、右脳で感じ(インプット)、左脳で創造する(アウトプット)することを意識し実践する必要がある。
今後についても意欲のある中小企業の創造性開発に貢献していくと共に、現在かかわっている事業再生案件についても製品、立地、要員について抜本的見直しの見地から事業計画策定を行っていきたい。
(2010年1月 長屋 勝彦)