2012/09/02

「怒る」と「叱る」について


 部下を持つ身になると、部下指導に苦労をしている方も少なくないと思う。コーチング、部下指導法など様々な書籍が売られていることは、このことに悩んでいる人が少なくないということであろう。
 部下がミスをしたときに、ついカッとなって部下を怒鳴ったり、その部下のいないところで、その部下のことについて論評したりと、上司も人間だから仕方ない部分もある。 しかし、本当に部下を成長させるためにはどのように指導していったらよいのだろうか。
 私は、部下をいかに上手に叱ることができるか、ということが大事だと感じている。もちろん日々の業務の中で、コーチングやティーチングを使って成長を促すことは当然のこととして、失敗したときにどのよう接するか、である。それは、怒っているのではなく、どう叱るかである。
 「怒る」とは、感情の起伏の問題で、腹が立ったということであり、怒って部下に接するということは、感情に任せた発言となる。「叱る」とは部下が成長するためには、どのようにしたらよいかということを考えながら接することである。部下から見れば、外見的には同じに見えるかもしれないが、言っているこちら側としては大違いなのである。
 「このミスは、少し感情を入れて怒っているように叱らなければ相手に伝わらない」と思えば、不機嫌な顔をして強い言い方で接する場合もあれば、冷静に淡々とお話するなどケースに応じて千差万別である。
 話をする環境も配慮しなければならない。怒りにまかせて、皆のいる前でミスをした部下を叱責すれば、部下のプライドも傷つき、改善していく気持ちを持たせることが出来ないばかりか、悪感情だけを残す結果になりかねない。
 今叱る方がよいのか、後で叱る方が良いのか、場所を変えて叱る方がよいか、皆の前で叱る方がよいか、様々な選択肢の中で部下にとって最善の方法を考えて話さなければならない。
 また、直接部下に話をする方法以外に、間接的に部下に接する方法もある。ミスをした部下のいない時に、他のメンバーに対して、その部下の悪い部分を話したり、論評したりするのはもってのほかである。他のメンバーに話をしてよいのは、間接的に伝えたい内容だけである。他のメンバーに話をしたら、確実にそのミスをした部下の耳に入ると思った方がよい。従って直接話した方がよいことと、人を介して話した方がよいことを使い分けて話をするのも、叱る技術の一つではないかと思う。余談だが、プロ野球の監督は、直接選手に話をする場合とスポーツ新聞の記者に話して記事に書かせるという場合と伝える方法と使い分けたりするそうだ。
 私自体はまだまだ新米のマネージャーで、かく言う叱る話をまだまだ上手に出来ているとは思っていない。感情に流されて、「しまった」ということもしばしばある。いかに自分の感情をコントロールできるか、ということがマネージャーには問われていると思う。
(2012年8月 佐野裕志)