2015/07/01

自己研鑽におけるブレイクスルー

私は趣味でモトクロスバイクに乗り、月に1回の草レースに参加しています。草レースといえどもスプリントレースなわけで、各々の目的は誰よりも早くラップする事、ひとつでも順位を上げてフィニッシュする事です。その為にレース以外の週末に実際のコースで個々に練習するのですが、プロでも、初心者でも、中級者でも、それなりのレベルに応じた課題を抱えており、その課題をクリアする事を積み重ねてレースに挑んでいます。

私が今課題にしているのはスタートです。モトクロスのスタートは、競馬のゲートのように、競技者自身が分からないタイミングで一斉に目の前のバーが下ります。アクセルを開けすぎればタイヤが空転し前に進まず、クラッチミートが速すぎれば急にグリップしてウィリーしてしまい前に進まない。そんな繊細なスタートですが、スタートグリッドでいつも私の隣に構える、すこし太目でいかにも育ちのいい感じの青年、おそらく20歳前後、が毎回見事なスタートでホールショット(1コーナーに一番早く到達する事、ホールショット賞という表彰もある)を奪い取っています。

その体格と彼の人柄から、周囲はトラクション(タイヤが地面を押し付ける力、トラクションが良いとエンジンパワーを効率よく推進力に変えることが出来る)が良い、と揶揄しますが、決してそれだけではなく、何か秘訣があるのだろうと思っていました。有る週末にたまたま彼と話す機会があり、さぞスタートの練習しているのでしょうね、と伺ったところ、意外なことに、練習はほとんどしていません、との事。さらに驚いたころに、ただ、かなり研究しています、と、その風貌からイメージできないような言葉が返ってきました。

その日の練習ではスタートが一度もうまくいかず、結局課題の積み残しで終わってしまったのですが、この日は練習で得たもの以上に、彼の言葉からの学びを感じ取れたと思いました。

場面変わって平日の私の生活ですが、毎日、その日に起きるトラブルの火消しでほぼ定時過ぎまでかかってしまい、やるべき資料の作成等は周囲が帰った後に落ち着いて取り掛かるといったサイクルに陥ってしまっています。ここまで大きなトラブルが良く毎日起こるもんだ、と悲しくも感心しますが、ほとんどの場合は前兆がある、もしくは細かく進捗確認する事によって、事前に気づくことができる場合であって、傷口も深くならずに済んだと、結果的に省みることばかりです。人間は失敗に学んで成長するもの、と性善説で語りたいところですが、結果にまったく説得力が無いありさまです。

私の持論の一つに「若いうちの苦労は買ってでもしろ」という言葉があります。前の会社の上司から頂いた言葉です。「若さとは年齢が決める事ではない、心のありようが決めるものだ」とは、今の会社の社長の持論であり、二つの言葉を掛け合わせると、あまり想像したくない状況となりますが、常に苦労しつづけろ、ということになります。

人の成長に、高いハードルや壁が、少なからずも必要なのだろうと思います。その壁が高いほど、また多いほど、ブレイクスルーした時に得られるものも大きくなります。

現状のルーティンの数をこなすこと、単純に周回数だけ稼ぐモトクロスの練習や、指示された仕事の報告業務、では人の成長は無いと思います。しかし、壁を乗り越えることによって、そのブレイクスルーの経験が人の成長に結びつくものと考えます。趣味の分野でも仕事の分野でも、なるべく多くのブレイクスルーを実現できるよう、高いハードル、厚い壁に挑み続けようと思います。
(2015年6月 半田 智史)