性善説は、古代中国・戦国時代中期の思想家(儒家)である孟子の説として有名です。「人間の性の本質は善であるという」説です。次のような水にたとえた話があります。
「低い方に流れない水がないのと同じように、本性が善でない人間もいない。せき止めれば逆流するが外から力を加えられたからで、水の本性ではない。同様に、人間が悪事をするのは外物にひかれるからだ。」
性悪説は、古代中国・戦国時代末期の思想家(儒家) 荀子の「人間の本来の性質は悪であり、善とされるものは、後天的に作為した結果である」とする説です。
「荀子」性悪編の有名な書き出しを紹介します。
「人之性悪、其善者偽也」 人の性は悪にして、その善なる者は偽(作為)なり
私は古典を学ぶことが有用であることを部内で広く発信するとともに、自己啓発への動機づけとして、次のような話をしました。
孟子の性善説では、人間の本性は善とされますが、性善を完成させるに学習をしなければなりません。荀子の性悪説では、人間の本来の性質は悪とされますが後天的に善になるので、学習をしなければなりません。よって、どちらの説であっても、自ら学ぶこと、修養することが大切になります。そういう意味では性善説も性悪説も同じだと思っています。
「善」と「悪」は全く反対の概念ですが、中国には、たがいに排斥し合う反対ではなく、逆に互いに引き合う関係という考え方があるそうです。「陰」と「陽」、「虚」と「実」など、ものごとを一面的には見ないという両面思考の考え方があるそうです。中国の古典を読むときに意識しておくと理解が進むと思います。
2015年10月 吉田 健司