2015/10/28

有名ラーメン店に学ぶマーケティング

秋と言えば、スポーツの秋、芸術の秋、食欲の秋です。私の中で食といえば、ラーメン二郎を真っ先に思い浮かべます。ラーメン二郎の特長ですが、まずボリュームです。大盛りの自家製超極太麺に、豚と言われる巨大なチャーシュー、タワーのような野菜の盛りと、大盛りのオンパレードです。二郎の麺は小で300g、大だと500gと言われています。小が一般のラーメンの麺の倍以上で、全く小ではありません。次の特長ですが、濃厚さです。脂っこく、醤油が強く、ニンニクが強烈です。まさに、強烈なパンチの雨あられといった感じです。そんな二郎をこよなく愛す人々をジロリアンと呼びます。


個人の見解ですが、二郎にはマーケティングのヒントが多く詰まっていると考えます。今回マーケティングの定義を標的市場の選定と4Pとした場合に、マーケティングの観点から二郎を考察してみようと思います。まず、市場について考察します。2009年と少し古いデータですが、ラーメン業界の市場規模は約7,000億円です。業界トップの幸楽苑が売上372億円、2位ハイディ日高で売上228億円、3位リンガーハットで売上200億円です。1位幸楽苑のシェアはわずか5%です。他方、同じくファーストフードのハンバーガー業界の市場規模は、ラーメン業界とほぼ同等の7,130億円です。しかし、1位のマクドナルド1社で5,319億円のシェア約75%を占めています。ここからラーメは好みやこだわりが分散されていることが分かります。つまり、二郎は、分散化された市場をセグメント化し、パンチの効いたラーメンをガッツリ食いたい層をターゲットとし経営資源を集中することで、ニッチャーとしての存在感を示していると言えます。


次に、4Pについて考察してみましょう。製品ですが、品質が一定ではありません。二郎は都内を中心に約40店舗ありますが、店ごとに麺の太さ・固さ、肉の量、脂身の割合、スープの乳化度合い等違います。もっと言うと、同じ店でも日によりブレています。しかし、ジロリアンはむしろ店舗ごとの違い、その日のブレを楽しんでいるように見えます。価格ですが、二郎の原価率は40%以上と言われています。一般的に飲食店の原価率は30%ですので、原価率は高く粗利率は低いです。なので、販売客数の確保が必要となります。5食単位で生産している10席の店舗では、次々回の完成までに完食出来ない場合、退店を促されることがあります。需要に合わせて生産するのではなく、生産に応じて需要しなさいということです。チャネルとしての店舗立地ですが、基本的に駅前にはありません。駅から徒歩20分超の店舗もありますが、長蛇の列です。そもそも二郎はラーメンではなく、二郎という食べ物と言われています。唯一無二ものものであり、替えがききません。なので、駅から遠いという欠点をものともせず来店客が途切れません。プロモーションとしての接客ですが、店舗にもよりますが、基本的におっかないです。逆に、それが緊張感をもってラーメンを待ち、そして食すという厳粛な雰囲気を形成し、二郎の価値を高めているようにも見えます。


以上のように、二郎はわれわれが学問や実体験で知っていることの真逆の部分もありますが、繁盛しています。


世の中は変わることよりも、変わらないことの方が多いです。原理・原則、歴史、古典の大切さは変わりません。そんな中、二郎は常識を疑い否定し、成功している事例だと思います。万人に通用する手法ではありません。ただ、このような方法があるということが皆様の今後の人生にヒントになれば幸いです。

2015年10月 加藤 昌毅