2016/01/30

実力をフルに発揮するには?

先日、大相撲の初場所で大関琴奨菊関が、日本出身力士としては10年ぶりに優勝しました。ここ数場所は怪我に悩まされこともあり、番付が下位の力士に星をこぼすことや勝ち越すことがやっとのことも多くあり、優勝は意外性をもって受け止められた感があります。

その琴奨菊関が優勝インタビューの際、プレッシャーのかかる千秋楽へどのように臨んだのか?という趣旨の質問に対して「一日中ルーティンでした」と答えていました。

優勝の理由についてもルーティンを毎日続けていたことが一つに挙げられていました。ここで言われているルーティンとは、スポーツ選手が勝負のかかる場面の前に行う一連の動作のことを指していて、野球のイチロー選手が打席に立ってから入る一連の動作や昨年のラグビーワールドカップで話題になった五郎丸選手も、ペナルティキックの前に独特のルーティンを行うことが話題になったことで記憶にも新しいところです。

ではなぜスポーツ選手は重要な場面の前にルーティンを行うのでしょうか?それは重要な場面で普段通りの力、自分の持っている力を出すためのスイッチを入れるためです。勝負事の場面で、適切な緊張を保って集中力を高めながら自分の持っている力を発揮するための一つの習慣なのです。もう一つ、ルーティンには流れを切るという効果もあります。悪い流れを切ることはもちろん、良い流れで来ているときも力んでしまう可能性があるため、これを切る習慣がルーティンです。

ここでポイントとなるのは、習慣を入れるということです。何かを行う前に習慣的な動作や行動を取り入れることで、実力を発揮しやすくなります。実力が発揮しづらい理由は温度や音などの物理環境的な要因もありますが、心理的な影響で発揮できないこともあります。物理的な環境は自分の力で変えづらいですが、心理的な影響は自分の力で変えることができます。その方法がルーティンをはじめとした、普段から行う継続的な習慣なのです。

私たちも大事な場面の前に何か一つ習慣を入れることで実力を発揮しやすくなります。試験、プレゼンテーションなどの緊張する分かりやすいシーンはもちろんですが、仕事で行き詰ったときや何か苦手なこと、困難な場面に遭遇したと感じたときに一つの習慣を入れておくことで、容易に乗り越えることができます。実力を発揮させる習慣化にはいろいろな方法がありますが、比較的簡単な方法をご紹介します。それは以下の3ステップに分かれます。
不安・緊張など自分がネガティブになるシーンを5~10個、紙に書き出します。
そのシーンになったことを想像して、その時にそのネガティブな気持ちを晴らす動作を1つ決めます。
①の紙を見て②の動作を行うことを最低1日1回、1週間続けます。
③の段階まできたら、何か日常でネガティブな気持ちになったときに②を実行してみると効果的です。

たったこれだけです。これだけで良いのですが、②の動作で三つだけ工夫が必要です。

まず、ネガティブな気持を晴らす動作はできるだけ簡便なものが良いです。例えば上を見ることや、肩を後ろに引くことなど、胸を張ったり顔を上げるものがおすすめです。そして、動作をしたときに自分の体の感覚の一つに意識を持っていきます。向ける意識は、触覚、嗅覚、味覚に意識を向けてください。音楽を聴いたり文字を読むことなど、聴覚や視覚に意識を向けるとそれまでの流れが切れず、意味がありません。例えば、立っているときは足の裏が床に触れている感覚や周りのにおいなどを感じるのが良いです。

最後の工夫は、この何かの感覚が感じられたらそのまま息をゆっくり吸ってゆっくり吐くことを3回~5回続けてみます。深呼吸をする必要はありません。自分がゆっくりはいてゆっくり吸っていると思えばよいです。

これが比較的簡単な実力を発揮する習慣化です。

私も2年ほど前にトレーニングを受けて実践をしていますが、人前で緊張をしたり、頭が真っ白になる場面が大分なくなり、仕事やプレゼンテーション前に重い気持ちになることが低減され、日々のびのびと過ごせるようになりました。皆さんも機会があったら是非お試しいただいてはいかがでしょうか?
2016年1月 J.H