2016/01/29

不適切会計に思うこと ~経理部門の役割~

昨年、東芝の不適切会計問題が発覚しました。経営幹部の強力な損益改善指示に基づき、組織ぐるみで損失を先送りしたと報告されています。

東芝に限らず、大きな組織で、かつ、内部統制の仕組みが確立されている会社の場合、組織下方の主導による不適切会計は、多くの関所が設けられ、それを一つ一つクリアしていかなければならず、実現には困難を伴うのが一般的です。

一方、経営幹部主導による不適切会計の場合は、本来、不正を取り締まる側の人間(経理部門や監査部門等の管理部門等)が、不適切会計に加担することとなり、会社総力を結集し実施するため、組織下方からの不適切会計に比べ、実現が容易になります。

では、経営幹部主導による不適切会計を防止するにはどのような対策が有効なのでしょうか。今回は、企業の経理部門が実施可能な対策を考えます。

一つ目は、過度なノルマを含み、達成困難な経営計画を策定しないことです。保守的すぎ達成容易な経営計画は、企業成長のためには好ましくありませんが、ハードルが高すぎ達成困難な経営計画は、不適切会計を誘引します。

そのため、経理部門は、経営幹部の経営方針・目標値を通知する一方、まずは、実際に事業を実行する部門からボトムアップで経営計画を立案させます。その後、全体最適の見地から、事業部門と調整し、経営計画を取り纏めます。

二つ目は、当期利益至上主義を改め、損失を将来に持ち越さない、という社内風土を醸成することです。

不適切会計を実施して当期利益を増加させても、実態経営は変わらないし、キャッシュフロー増加にも繋がらず、単なる将来への損失先送りに過ぎません。しかも、現状の経営状態が数値に現れないため、経営課題が明確にならず、体質改善が遅れ、低収益構造での事業運営が継続され、結果、出血が増加し続けることとなります。

このことを、経理部門は社内へ周知させます。その際、経理部門幹部が各経営層に対し指導し続けるだけではなく、各担当者レベルの日常業務からも実施していきます。例えば、伝票の支払い処理を担当している者は、決算時における伝票提出期限を社内指示し、費用処理の先送りを防止させます。棚卸資産や売上原価を管理する担当者は、売上に対する売上原価設定が過少になっていないか、関連部門へヒアリングし、原価の詳細を確認します。

三つ目は、経理部門各自が倫理観を高めることです。経営幹部主導とはいえ、実際に帳簿へ仕訳計上するのは経理部門です。また、監査法人や外部に対し、経営数値を説明するのも経理部門です。自分自身の仕事に責任感やプライドを持ち、帳簿が汚れることに対する倫理観を高めることが重要です。

2016年1月 K.H