2016/09/01

「男子4×100mリレー 日本チーム」をクロスSWOTで分析する

リオ・オリンピックが盛況のうちに終わりました。個人的には、陸上男子4×100mリレーが印象に残りました。個々の力が世界レベルでないのにも関わらず、素晴らしいバトンパスで銀メダルを獲得です。
そこで、誠に勝手ながら、日本のリレーチームの戦略をクロスSWOTで分析してみました。まずはSWOT分析です。

▼S(強み): スピードに乗ったバトンパス
以下のデータより日本チームのバトンパスの素晴らしさが分かります。
【日本チーム】
4人のベストタイム合計 40.38秒 ⇒ 決勝タイム 37.60秒
バトンパス効果: 2.78秒
【ジャマイカチーム】
4人のベストタイム合計 38.89秒 ⇒ 決勝タイム 37.27秒
バトンパス効果: 1.62秒

▼W(弱み): 個々の走力の弱さ(9秒台不在)
遅いとは言いませんが、メンバー全員10秒台です。
山県10.05秒、飯塚10.22秒、桐生10.01秒、ケンブリッジ10.10秒
※ジャマイカ・アメリカは全員9秒台

▼O(機会): 他国のバトンパスの粗さ
予選・決勝を見ると、他国は次走者へなかなか追いつかず、スピードを緩めながらバトンパスというシーンが目立ちます。

▼T(脅威): オリンピックのプレッシャー
世界大会、4年に一度というプレッシャー。特に決勝では全世界の注目が集まります。会場のボルテージも最高潮になるでしょう。

次に、上記SWOTを利用し、クロスSWOTで戦略をみていきましょう。

強み×機会: ①積極攻勢戦略
強み×脅威: ②差別化戦略
弱み×機会: ③段階的施策戦略
弱み×脅威: ④撤退

日本チームの戦略は①~④のうちどの戦略でしょうか?

日本チームが取った戦略は「①積極攻勢戦略」です。強みであるバトンパスを活かし、他国の粗いバトンパスを機会として活かす戦略です。
または「②差別化戦略」ではないでしょうか。バトンパスの強みを自信に変え、オリンピックのプレッシャーに打ち勝つ戦略です。
そして、驚くことに日本チームは、予選後、決勝に向けて強みをさらに尖らせる戦略を立てました。さらにスピードに乗ったバトン受け渡しの為に、スタートを半足長延ばしたのです。結果、バトンパス効果をさらに向上させ、他の国のバトンパス失敗さえ誘発しました。

会社経営においても、この「①積極攻勢戦略」「②差別化戦略」は非常に重要です。特に中小企業では、多くの経営資源を使い、弱み克服する余裕はありません。強みを活かして外部環境(競合)と戦う。これが一番効果的ではないでしょうか。
コンサルタントとして、企業を診断する際、その企業のダメなところに注目してしまいます。また、組織において、同僚・部下のできないところに目が行きがちです。弱点克服もやらなければいけないことですが、まずは、強みに注目して、それをさらに延ばす、強みの範囲を広げるなどアドバイスすることが大切です。

強みを正確に認識し、それをさらに尖らせることで、世界に通用する企業、人材へなれる可能性を、改めて感じたオリンピックでした。

2016年 9月 稲吉勝範