2016/09/15

外国人介護士

現在、日本の介護施設ではEPA締結しているインドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国を中心に外国人介護士を受入れています。受入れ人数は年々増加傾向にあり、2015年度は、568人(インドネシア212人、フィリピン218人、ベトナム138人)となりました(対前年比+158人)。しかし、介護事業者側の受け入れ態勢は万全とは言えません。その最大の問題は日本語の壁です。東京都と首都大学東京・国際医療福祉大学は、EPA外国人介護士・看護師候補者に対して学習会(http://epa.hs.tmu.ac.jp/)を提供するなど、外国人介護士の人材育成支援の取り組みを開始するなど、環境整備の動きが見られますが、介護事業者側の取り組みには濃淡が見られます。
今後、外国人介護士に対する日本語教育サービスを提供するプログラム作成と運営に関する支援を実現することが、今後、介護従事者が極端に不足することが予想される日本の介護業界において、必要と考えられます。

ところで、以下に、外国人介護士・看護師(学生含む)の日本語学習について、ご本人に直接伺ったり、人づてに伺ったお話をご紹介したいと思います。

先ず、日本でのEPA締結国以外、アフリカ人留学生(看護)の受け入れ体制についてです。
今年3月に知人が開催したイベントで千葉大学看護学科に留学しているジンバブエの青年に会いました。
EPAの3か国や中国などの学生に対しては、国別の受入機関が設立されており、日本での受け入れ体制が整備されています。従って日本での生活環境や学習環境についてもある程度支援が受けられます。しかし、アフリカ諸国にはそれがありません。そのため、日本語習得環境の獲得には苦戦しているようでした。

次に、介護事業者による日本語学習機会の提供実態です。
今年4月に、社会事業大学で開催された「かいごの学び舎」というイベントで、大手不動産会社の介護事業子会社(有料ホーム)で働くフィリピン人の女性介護士が日本での就業経験をプレゼンテーションするセッションがありました。
プレゼンテーションを聞く限り、とてもご本人は意欲的に仕事に取り組んでいる印象を受けましたが、介護士の上司から「日本語が流暢でないので、第一線の仕事は任せられない」という発言があり、その会社の日本語習得環境がとても気になりました。
そこで、セッション終了後、直接ご本人に「どうやって日本語を勉強しているのですか?」と尋ねると「テレビドラマを見たりや息子の小学校の教科書で勉強している。会社が提供する日本語教育機会はあまり無い。」との回答がありました。
大手事業者でも十分な日本語学習環境が整備されている訳ではないということが分り、支援の仕組みの必要性を感じました。

上記の例については、其々事情が異なるため一概には評価出来ませんが、母国を離れ日本で介護(看護)の仕事に従事して頂く訳ですから、十分な日本語学習環境の提供が必要と思います。また、地域包括ケアシステムを担う一員として、包摂的な地域コミュニティを形成する支援もまた必要になると思います。
2016年9月 小出聡