2016/09/27

マーケティングオートメーションツールによるBtoBマーケティング市場の変化について

ひと昔前までは、Webマーケティング事業を展開する会社の主要なサービスといえば、SEO対策やリスティングなどの広告が主でした。
しかし、Webマーケティング業界の時代の流れも変わってきおり、現在は、マーケティングオートメーションやコンテンツマーケティングなど主要な展開サービスの内容が変化してきています。

また、Webマーケティングによる営業・広告手法の変化により、一般企業の営業スタイルにも変化が見受けられます。
大きな流れとしては、営業マンが足繁く顧客先に通って営業を行うスタイルから、デジタルを駆使して顧客にアプローチをし、デジタルで後追いを行うスタイルへの変化です。

先だってBtoCの業界では、「アマゾン」「楽天」などの「ショッピングモール」や飲食店や美容室などの「口コミサイト」など情報をネットで集め、ネットで購入・予約が完了する仕組みが出来上がっています。
しかし、BtoBの業界は「取引金額の大きさ」「決裁に関する関与者の多さ」「購入製品の複雑性」など様々な要因が重なり、BtoCの業界に比べて、Webを通じた購入・情報収集の仕組みは広がっていません。
マーケティングオートメーションツールの登場が、BtoB業界における、Webを中心としたデジタルでの情報収集・購入の仕組みの促進につながっていくものと思います。

マーケティングオートメーションツールでの営業成果を高めるためには、リスティング対策、SEO対策、コンテンツマーケティングなどの手法を用いてWebサイトへのアクセスを増やすことが必要となります。
また、Webサイトのコンテンツを充実させることも非常に重要です。具体的には、製品の紹介だけではなく、セミナーの案内やホワイトペーパー提供、カタログ提供、説明動画提供、関連知識情報の提供などコンテンツなどが挙げられます。

マーケティングオートメーションツールの出番は主にこれらのプロセス完了後です。
ホワイトペーパーなど各々のコンテンツを提供する際に「企業名」「名前」「業種」「役職」「メールアドレス」などの属性情報を入力してもらいます。
属性情報の情報を入手したら、入手したメールアドレスに対し、メールマガジンなどを提供することはもちろんですが、Webサイトへのアクセスの履歴やセミナーへの参加履歴、資料ダウンロードの履歴など各種情報を蓄積し、顧客の行動履歴を蓄積させます。
また、入手済の属性情報である「業種」「役職」などの情報を踏まえて、最適なコンテンツをメールマガジンなどで提供します。

この活動はすぐに購入に発展するわけではありませんが、いますぐに購入する顧客だけではなく1年後や5年後など中長期的に顧客になる可能性がある顧客に対して非常に効率的な営業活動が行えます。
継続的な接触をすることで、いざ製品・サービスの購入を検討する際に、選択肢として認知・認識してもらえる可能性が非常に高まります。

また、短期的な成果につながるケースとしては、「セミナー参加や資料のダウンロードなど接触回数が多い顧客」やホームページ内で「価格に関する情報」「導入事例」など製品の具体的な選定段階で閲覧するであろうコンテンツのページを見ている回数が多い顧客を抽出できます。これら短期的な導入可能性がある顧客は、マーケティングオートメーションツールでの形式的な後追いから、電話営業部隊のインサイドセールスや外回りなどで直接訪問する営業部隊に引き継ぎを行い、個別に営業を行います。
インサイドセールスや訪問営業での対応をしたものの、購入時期がまだ先の場合や失注した場合などはマーケティングオートメーションツールでの対応に戻し、マーケティング部隊が引き続き対応をしていきます。

まとめますと、マーケティングオートメーションツールの大きな役割は以下のような内容になります。
(1)Webサイトへの来訪実績などをもとに、顧客の見込み度(興味度)を自動で把握したうえで、興味があるコンテンツや製品を把握することができる
(2)興味により提供するコンテンツの内容や見込み度を適宜分析することで、最適なタイミングで後追いをすることができる

このように書くと、何でもできるツールのように思いますが、マーケティングオートメーションもまだまだ課題があります。
例えば、どのような「行動履歴」を取った顧客の見込み度が高いと判断できるかは、ある程度主観に頼らざるをえません。運用しながら適宜改善し、自社にとって最適な見込み度判定の基準を作っていきます。
また、顧客の属性や行動履歴別にメールマガジンの内容や表示させるWebサイトの内容を変える場合は、その分コンテンツを作成するためのマンパワーが必要になります。

したがって、現在の導入はマンパワーがある大手企業が中心です。
ただし、営業が新規顧客への初期の接触からクローズまで行うスタイルに比べて、より少ない工数で営業活動を行うことができるため、中小企業など多くの企業に普及していくことは間違いありません。

最後に、日本のBtoB市場では、マーケティングと営業が一緒になっていることが多く、マーケティングを専門で行える人材はまだまだ不足しています。
マーケティングオートメーションツールなどマーケティングツールの発展により、デジタルな営業スタイルが拡大していくことで営業の仕事の内容・あり方も変わっていくのではないかと思います。
2016年9月 斎藤 憲明