2010/12/22

Web刊は紙面の代替となるか?

私が社会人になり会社に入った時言われたことの一つに「日経新聞を読みなさい」がある。皆さんもおそらく同じことを言われているだろうと思う。社会人としての最低限の経済・社会知識をとして、顧客と会話をするための基本的な知識として、などのために日経新聞を読むことは最低限のたしなみとされていた。
最近、日経新聞は「Web刊」というものを宣伝している。オフィスで中年のおじさんが「新聞読んでるか?」というのに対して、若者が「私はこれで読んでます」とiPhone(らしきもの)を見せるという、あの宣伝である。私はこの宣伝を見るといつも違和感を禁じえない。というのは、iPhoneでニュースを読むことは、新聞を読むことと同じではないと感じているからだ。
先日、新入社員に対して、昔と同じように「日経新聞を読みなさい」と言ったところ、「満員電車で新聞を読むのは大変なので、iPhoneで読むようにしたい」と言われた。私はそれに対して、「新聞を読めと言ったのは、広く様々な情報を吸収せよという意味である。画面でクリックして読むということは、おそらく興味のあるニュースしか見なくなる。それでは広く様々な情報を吸収するという目的を達せられないだろう」と答えた。
新聞の一番のメリットは一覧性にあると思う。広げて、ざっと見て、拾い読みをする。一面にはその新聞社が重要と考える記事が、経済・社会・政治・文化・連載物等々、雑多に記述されている。自分の興味の有無に関わらず、雑多な情報がいやでも入ってくる。これが重要だと思う。これによって、ともすれば狭くなりがちな情報の範囲が少しでも広がる。
Webでこれが可能だろうか?あの小さなiPhoneの画面で。
私は、少なくとも私が新聞に求めている効能はWeb刊では得られないと思う。WebにはWebのメリットがあることは認めるが、昔おじさんたちが「日経新聞を読みなさい」と言って期待した効能は得られないのではないだろうか。
「Web刊は新聞の代替とはなり得ない。」これが冒頭の問いに対する私の答えである。
皆さんはどう考えますか?
(2010年12月 伊藤 純一)