2013/09/01

貫くこと

自分の信念を確立し押しとおすことは、成功に向けた十分条件ではないが必要条件の一つであろう。
ただ、信念を続けることで人や組織とのハレーションが続いたり、結果が出ずに批判を浴びる時には、信念を曲げてしまいたくもなる。


メディアの注目を浴び、ファンやスポンサーなどから常に結果を求め続けられるスポーツ界においては、なおさら難しいことだろう。

Jリーグのトップカテゴリである、J1に川﨑フロンターレというチームがある。

私はサッカーの選手も指導者の歴もないが、
その試合を数試合でも見れば、魅力あるチームであることが理解できる。

相手チームから奪われたボールは、すばやいパス回しによって稲本・山本の両ボランチを介して大久保・レナト・中村の攻撃陣3人に渡され、一気に攻め上がる。
そのスピード感は我々素人から見ていてもわくわくさせてくれる。


そのわくわくする気持ちは、分かりやすいからだけではない。
一つの意志を感じるからだ。
勝った時も負けた時も、強い意志を感じる。
どんな時間になってもどんな場面でも攻撃に向かうことをあきらめていない。



フロンターレは、8月31日現在でリーグ戦の順位は18チーム中の7位。
チームの成績だけ見れば決して快進撃を続けているとは言えない。
優勝にかかわることが多い強豪でもなく、
サッカー日本代表に選手が選ばれているわけでもない。


しかしそのフロンターレ、今シーズンに入る前に期待の声は少なくなかった。

昨シーズン途中に指揮を執った風間八宏氏が、その就任前に行っていたテレビでの解説が明確でわかりやすく、
率いていた大学チームにおいて好感が持てる攻撃的なチームだったことに加え、
所属選手のポテンシャルも高く、攻撃的な選手の補強を行ったことがその理由だった。

いざスタートを切ると、リーグ開幕して以来8試合で1勝4敗3分け。
攻撃力を売りとするチーム、そして監督にも関わらず点数が取れない。
逆に、チームの取り決めが浸透していなかったのか、失点を重ねていく。
どうも勝ちきれない。


期待をしていたメディアはチームの批判を続ける記事を増やしていく。
ファンを除いて、私のようなミーハーは興味を失っていく。

そんな中でも、風間氏の信念は変わらなかった。

選手へ自主的な発想力を促し、そのスピード上げてチームが共有することによって攻撃力を最大化させること、
そしてゲームを大局からではなく、個々の事象を組み合わせて構築する
(と私が思っている)スタンスは貫かれているように見えた。

当初は戸惑っているように見えた選手からも、徐々にネガティブなコメントが聞こえることが少なくなってきた。


チームは5月を迎えると、以降のリーグ10試合で引き分けを挟んだ5連勝を含む7勝1分け2敗と見違える結果を残す。
現在、フォーワードの選手はリーグの得点王になるなど、チーム全体が好調に見える。


これからチームが好調を続けるか、また落ちるかはわからない。
ただ、風間が率いる限り、信念は変わらないのであろう。


状況に応じて、柔軟にスタイルを注意変えることは必要だが、それにしても自分たちが持っている信念というものがあってのもの。
人の批判やアドバイスを受けることで、方向性を変えたり、逆に固執しすぎて周囲が見えなくなることは少なくない。

その中でも自分を保つということは、どのような世界にも必要なのかもしれない。
(2013年9月 長谷川 潤)